宮本研究室は、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻を本拠としていますが、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻にも所属しており、アデレード大学や米国惑星科学研究所と連携しています。研究内容は主に太陽系探査学と宇宙資源学です。
研究室は東京大学本郷キャンパスの工学部3号館(理学部1号館のとなりのローソンのある建物)にあります。研究室に配属となる学生は、学部生の場合は工学部創成学科・PSIコースか理学部地球惑星科学科に、大学院の場合は工学系研究科システム創成学専攻か理学系研究科地球惑星科学専攻に所属することになります。
研究室では宇宙関係の専門家になることを志望する学生さんを優先しているので、研究室に配属を希望する方は、事前に宮本教授にコンタクトして、研究の内容や研究の進め方などについて話を聞くことをお勧めします。なお専門家といっても、必ずしも研究者ばかりではなく、宇宙関係のコンサルタントや宇宙ベンチャーなど関連分野で活躍したいと考える人材も含まれます。
卒業生の進路はさまざまです。国立大学や海外の大学、JAXAなどの宇宙機関に行って宇宙探査の最前線で活躍している研究者もいれば、外資系コンサルタントや大手メディア、金融機関、メーカーなどで活躍している人もいますし、起業したり公務員になった人もいます。宇宙を志すと職が無くなる、という時代では既になく、就職に困ったという卒業生は居ないように思います。
私たちは宇宙資源開発を目指しています。資源を天体上で探査するところから、これらを集める技術、有用物質を抽出する手法、これらを貯蔵する方法、さらに利用手段に至るまで、ひと続きの技術を一気に開発しようとしています。そのためには天体表面の地質や土砂の状態、地下浅部の構造を理解する必要があり、それには地球科学的な手法の他に、機械学習やデータ処理、数値モデルを含め、粉体物理に関連した技術が重要です。さらに真空中での特定の元素の挙動を知りこれをうまく操る方法論の確立と共に、合理的に何をどう使うか、自由な発想からさまざまな視点での検討を行うことが重要になります。主に以下の方向の研究を行っていますが、所属学生の研究テーマは、研究室に所属した後でかなり時間をかけて相談しながら決めていきます。研究室内ではアルバイトという形で研究と別のテーマで仕事をすることもあります。研究テーマは興味と資質に応じて途中で変更することもできます。
- 宇宙資源開発の基盤的研究:私たちの研究室を研究代表として2025年に宇宙戦略基金SX拠点(牽引型)に採択されたことから、合理的な宇宙資源利用に向けた基礎的検討を学内の20の研究室と学外の10個程の連携機関と共に集中的かつ急速に進めています。関連して、私たちはJAXAやNASA等の依頼を受け、月や小惑星などの模擬物質(シミュラント)を開発しています。また機械学習を用いた物体認知や超解像、立体再構成技術などを開発し地理情報システムを組み合わせて惑星地質学へ応用しています。TV会社や大手建設会社らと共同で、ドローンを用いた天体模擬フィールドの研究や模擬物質の流動解析などを実施しており、防災科学的な側面でも貢献しています。
- 政府機関の進める科学探査への貢献:JAXAやNASA、ESAなどが進める探査計画に参加し、小惑星や火星、月、衛星を調べています。当研究室の専門性は固体天体の表層環境と地質解析で、理学的には各天体の比較を通じて地球の表層環境の特異性・普遍性を明らかにすることが目標で、工学的には宇宙資源利用につながる基礎検討を行っています。JAXAの火星衛星探査計画(MMX)では地質・表面探査を、月極域探査計画(LUPEX)では地中レーダによる地下探査を、月資源探査計画(TSUKIMI)においては、サイエンス全般のまとめと月資源ビジネスの検討を、NASAの進めるアルテミス3号では、月面誘電率測定器の開発を、当研究室は担当しています。研究室の所属学生は、こうした大型研究の公式メンバーとして参加しながら各自の研究を進めることが多いです。
- 民間企業と進める宇宙資源開発:現在世界中の民間企業が、宇宙開発を進めています。当研究室は、日本や米国、オーストラリアに拠点を置く複数の企業らと契約を結んだうえで、それぞれの計画に向かった共同研究を行っています。特に世界で初めてとなる民間企業による小惑星資源の開発を目指している米国のKarman+社とは、彼らの最初のミッションHigh Frontierに2つの科学測器を提供するため、協働で事業を進めています。またDigitalBlast社とは資本的にも連携し、民間宇宙ステーション計画と関与しながら将来の民間による宇宙資源開発に関連した検討を進めており、これを理学的研究に役立てようとしています。